バベル


久しぶりに映画を観たいなあということで、菊池凛子のアカデミー助演女優賞ノミネートで話題になった「バベル」を観に行きました。さすがゴールデンウィーク(このフレーズも何回目だろう)人・人・人で溢れていましたが、みんなのお目当ては「スパイダーマン3」でした。立ち見まで出る盛況に驚きました。わたしは一回も観たことないですけど…。
観に行く前にちらっとホームページやレビューを見たのですが、なんだかテーマが重そう…とちょっと腰が引けてしまいました。映画は仕事の合間に観に行くという意識が強くて、明るく楽しいエンターエインメントが好きになってきた今日このごろ。観た後にしんどくなるのは困るなあと思いつつ、それでも気になって観たんですが…やっぱり暗かったかも。もちろんそれだけじゃないんですが、良くも悪くもすごく印象には残ったので、良い映画と言えるのかもしれません。以下ネタバレ感想。
ロッコの貧しい兄弟は手に入れた銃で競い合ううちに、あるアメリカ人夫婦の妻を撃ってしまう。その夫婦がブラッド・ピットケイト・ブランシェット。夫婦は末の息子の突然死を境に夫婦仲がまずくなっている。その夫婦の2人の子どもたちの乳母は不法就労のメキシコ人女性。メキシコの息子の結婚式のために2人の子どもたちをつれて本国へ。そして、何の脈絡もなく現れる耳が不自由な少女菊池凛子。これらの物語がどんどん移り変わっていきます。でも、どの話も重くてしんどいものばかりでした。
兄弟は父親と逃げるが、最終的に兄は警察に銃殺されてしまう。夫婦はモロッコで現地の人に傲慢で差別的な振る舞いをするが、本人達も政治的な問題に巻き込まれなかなか救援が来ない。メキシコ人女性は、帰りの国境でアメリカ人警備隊に差別的な扱いを受けた甥の衝動的な行動がもとで砂漠に置き去りに。警察に見つかった後は有無を言わせず本国に強制送還。菊地凛子は母親の銃自殺がもとで父親ともうまくいかず孤独に。さまざまな男にすりよるがうまくいかない。人と人の隔たり、すれ違う思い、それに輪をかける運命のいたずら、シビアすぎる展開でした。でも、それが現実なんでしょうが。「バベル」という題名がよく表していると思いました。
一番印象に残ったのは、やっぱり菊池凛子です。日本人という贔屓目を除いても目立っていました。見た目はとても女子高生には見えませんでしたが、陰気な感じがよく出ていました。そして、観ていてとても痛かった。目を逸らした場面も多かったです。友だちはいるけれど、友だちの存在が自分をさらに孤独にしたりして。いろんな男性に寄っていくけども、慰めにさえならなくて。痛かったなあ。脱ぎっぷりもすごかったけど、痛かった。同性としては彼女の捨て身な様子が、惨めなくらい孤独を感じさせて観ていられませんでした。
あとは、ブラピやケイトを始めとするアメリカ人の嫌な面がよく出ていて、アメリカの人々は愛国心が強い印象があるので、この映画はどう映ったんだろうと思いました。監督はやっぱりというかメキシコ出身。メキシコから見たアメリカということでしょうか。