無茶した黒蜥蜴


平日です。朝から仕事です。なのに、終業後に大阪へ。平日の観劇、強行突破でした。美輪明宏さんの「黒蜥蜴」一度見てみたかったので、かなり無茶だとは思いつつ、がんばって観てきました。江戸川乱歩が原作の三島由紀夫の戯曲です。あまり本を読まないわたしの、数少ない好きな作家の一人が江戸川乱歩です。明智小五郎シリーズも好きで、探偵物好きのルーツの一つになりました。そして、作品に流れる独特の美意識にも大いに惹かれました。日ごろのわたしは美についてまったく無関心ですが、乱歩の美意識についてはあそこまですごいと圧倒されます。三島由紀夫もそういった意識を持った作家ということで、黒蜥蜴にもその空気がすみずみまで現れてました。犯罪に対する黒蜥蜴の考え方とか、まさに美の追求という感じです。そして、明智もその犯罪に理知で対抗するけれども、黒蜥蜴とは美という意味では高いレベルで唯一理解し合えるという複雑さ。どちらが勝つか負けるかという中で惹かれあっていく二人というのがドラマですね。美輪さんは特別として、明智役の高島政広さんは知性と大胆さが感じられて明智にぴったりだし、雨宮役の木村彰吾さんは激しい情熱が感じられる若者らしく、とてもよかったです。そして、何度も再演されているだけあって、最後まで考えつくされた演技で隙がないのがすばらしかったです。惜しむらくは、仕事帰りだったので疲れが先に立って、集中できないところがあったこと。やっぱり平日はだめです。帰宅すると12時すぎ。明日も普通に仕事だというのに。